とほほのお茶・紅茶入門

YAPC::Hiroshima 2024 で「記事ネタに困ってるので取り上げて欲しいものがあればメールください」とお願いしたところ、早速懇親会で「お茶入門お願いします!」と依頼が来たので、今週は「お茶・紅茶入門」いきます。オレンジペコーってオレンジ入ってなかったんだ...
目次

お茶・紅茶とは

世界三大飲料

最初「コーヒー・チャ・ココア」と紹介していたのですが、「コーヒー・紅茶・マテ茶」だという指摘をいただきました。「世界三大飲料」で検索すると「コーヒー・紅茶・マテ茶」とするサイトが多く、一部で「コーヒー・チャ(紅茶やお茶)・ココア」としているサイトがあるようでした。日本マテ茶協会はマテ茶推し。静岡県発行の[1]ではチャ推しでした。誰かが明確に定義しているものではないので、どちらが正しいというものではないのかもしれません。生産量から見ると、コーヒー(384万t)、ココア(137万t)、チャ(125万t)、マテ茶(82万t)のようです。

世界のお茶の呼び方

お茶の原産地は中国南西部からミャンマーあたりと言われています。お茶のことを、広東省では「チャ」、福建省では「テ」と呼んでいて、世界各国世界各国、これらの呼び方が伝わったものが多いようです。

変種による分類

「チャノキ」は下記の変種に大別されます。

発酵や製法による分類

最初、この記事では、お茶、烏龍茶、紅茶の違いを下記のような「発酵の度合いによる」と紹介していました。

しかし、上記のような発酵による分類は誤りで、2023年3月に ISO(国際標準化機構) が発行した国際規格 [6] が定める製法の違いが基準だという指摘をいただきました。ありがとうございます。この国際規格に従った分類によると、世界のお茶は加工方法の違いで下記の6種類に分類されるそうです。おおむね中国の茶の分類が世界基準になった感じですね。詳細はまた時間のある時に別途...

とは言え、上記の国際規格がリリースされたのもまだ1年ほど前で、まだどちらが「正しい」というものでもなく、今はまだこういう分類をしている人が居る、お茶を専門とする会社でも今はまだ「お茶の分類(伊藤園)」の様に発酵度合いで分類している会社もある。ISO ではこの様に分類している。ISO ではこの様に分類しているけど、世間ではこんな風に分類している。とか、そんな状態なのかなと思います。ISO に従うと「ほうじ茶」も多分「緑茶」なのだと思いますが、「緑茶買ってきて」と頼まれて「ほうじ茶」買ってくると怒られてしまいますもんね。ここが「規格」と「世間一般」の差であり、両方を知っておくことも必要なのではないかなと思っています。

日本茶

緑茶

煎茶、抹茶、番茶、玄米茶などの総称です。茶色いほうじ茶も緑茶を焙煎したものであって緑茶に分類します。ただし、生活の中では「緑茶=緑色のお茶」であって、ほうじ茶と緑茶を区別することがあります。

煎茶

広義には緑茶をお湯で煎じる(抽出する)お茶全般を指します。狭義には日光を当てて育てた若い茶葉を蒸す・揉むなどの工程を経て作られるお茶を指します。

抹茶

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Evanhoever,
CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
日光があまり当たらないよう20日以上被覆して育てた茶葉を揉まずに乾燥させた後臼でひいて粉末状にします。渋みのある濃い緑色のお茶になります。「茶道」で使用されます。

玉露(ぎょくろ)

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Rama, CC BY-SA 2.0 FR,
via Wikimedia Commons
新芽が出たころの茶葉を日光から20日間ほど遮って育てた茶葉を使用します。少し高級なお茶になりますがタンニンが少なく、渋みの無い甘い味わいになります。普通の煎茶よりも低温のお湯(50~60度)で淹れます。

粉茶

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FCartegnie,
CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
煎茶などの製造工程でできる茶葉の粉を集めたものを指します。粉茶とは別物です。淹れる時は急須が必要です。寿司屋でよく見かけ、ティーバックにも使用されます。

粉末茶

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緑茶をなんらかの方法で粉状にしたものを指します。茶葉をそのまま粉状にするものや、一度お茶に抽出してフリーズドライするものもがあります。置いておくと底に沈殿するのは前者、よく溶けるのは後者です。生産コストは一番安く、ティーバックや菓子の材料などにも利用されます。

番茶

Green tea Bancha
Lutz 008,
CC SA 1.0, via Wikimedia Commons
成長して硬くなった葉(三番茶、四番茶など)を使います。煎茶の製法で作る緑色のものや、ほうじ茶の製法でつくる茶色いものもあります。カフェインは少な目ですがタンニンが多くなり渋めのお茶になります。

ほうじ茶

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Green,
CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
煎茶、番茶、茎茶などを焙じて(焙煎して)作ります。焙じることにより色は茶色になりますが、分類上は緑茶の一種とされます。香ばしさがあり、あっさりしていて食事中にもよく飲まれます。

玄米茶

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Kyd,
Public domain, via Wikimedia Commons
米を蒸した後に炒ったものと、緑茶をほぼ同量ずつ混ぜて作ります。色は緑色。茶の量が少ないためカフェインが少なく、子供から年寄りまで安心して飲めるお茶になります。

玉緑茶(たまりょくちゃ)

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通常のお茶は茶葉が針のような形状ですが、揉むという工程が無いため針状にはならず勾玉(まがたま)状の茶葉になります。製法により釜炒り製と蒸し製に分けられます。まろやかな甘みが特徴です。

そのほか、茶葉を摘む順番として下記のような分類があります。

中国茶

中国茶の分類

中国のお茶は下記に分類されます。

中国十大銘茶

中国十大銘茶」はいくつかあるようですが、Wikipedia では下記をあげています。

中国茶のいろいろ

緑茶:龍井茶(ロンジン茶)

Xi Hu Longjing Tea 01
Shizuha, CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
中国杭州市の西湖周辺名産の緑茶です。色合、茶葉の形、味、香りが絶品であることから四絶と称されます。

白茶:白毫銀針(ハクゴウギンシン)

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Pannet, CC BY-SA 4.0,
via Wikimedia Commons
白毛が残る若い茶葉だけを摘み取り弱発酵させた白茶の代表格です。高級品。ガラス製の急須で茶葉の変化を楽しみながら淹れます。主に福建省で生産されます。

黄茶:君山銀針(クンサンギンシン)

湖南省の洞庭湖にある君山島で採れる茶葉を使用し、製造工程の途中で後弱発酵させる黄茶の代表格です。白茶と同様ガラスの急須を用いて茶葉の変化を楽しみながら淹れます。

青茶:烏龍茶(ウーロン茶)

Oolong tea leaf
Suguri F(すぐり), CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
発酵を途中で止めた半発酵茶(青茶)です。発酵の度合いにより様々な種類があります。日本ではメジャーですが中国では福建省のみで飲まれるマイナーなお茶です。鉄観音、大紅包などがあります。

紅茶:祁門紅茶(キームン/キーマン紅茶)

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キームン, CC BY-SA 4.0,
via Wikimedia Commons
安徽(あんき)省祁門県を中心に生産される中国の紅茶です。インドのダージリン、スリランカのウヴァと並んで世界三大銘茶のひとつとして数えられ、フルーティーな香りを楽しむことができます。

黒茶:普洱茶(プーアル茶)

後発酵茶の代表格です。雲南省で生産されます。長期間発酵させる「生茶」と、麹菌を用いて短期間で発酵させる「塾茶」に大別されます。年数の長い生茶にはビンテージ品として扱われるものがあります。

茉莉花茶(ジャスミン茶)

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Shizuha, CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
ジャスミンの花を乾燥させたハーブティーと思われていることもありますが、緑茶にジャスミンの花の香りを加えたフレーバーティーです。白茶、烏龍茶、プーアル茶を使用することもあります。沖縄のさんぴん茶もジャスミン茶の一種と言えます。

紅茶

Wikipediaでは「茶葉や茶の芽を萎凋(乾燥)させ、もみ込み、完全発酵させ、乾燥させたもの」と紹介されています。あまり発酵させなくても紅茶に分類したりなど、ISOの分類法によると少し定義が変わっているかもしれません。お茶の色はおおむね紅色をしています。インド、スリランカ産のものが多く欧州でも広く飲まれています。

飲み方

世界三大銘茶

日本では下記の産地の紅茶を世界三大銘茶と呼んでいます。日本以外ではあまり用いられることはなく、世界的にはウバよりもヌワラ・エリヤやルフナの方が人気が高かったりもします。

クオリティーシーズン

紅茶にはそれぞれ収穫に適した時期があり、クオリティーシーズンと呼ばれます。例えばウバは7~9月頃、ヌワラ・エリヤは12~2月など。インドのダージリンやアッサムは春、夏、秋の収穫を下記の様に呼びます。ダージリンはファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、オータムナルそれぞれの収穫時期の違いを楽しんだりします。アッサムはセカンドフラッシュが人気が高いようです。

参考:

標高

スリランカの紅茶では、産地の標高による分類を行っています。

茶葉のグレード

オレンジペコーという名前をよく聞きますが、これはオレンジが入ったフレーバーティーではなく、茶葉の等級を表します。これもまた先端のものや大きければよいという訳ではなく、茶葉の種類によって適したものが好まれます。

まず、茶葉の穂先から何枚目の葉を使用するかがあります。

また、葉をそのまま使用するか、カットの大きさによって下記の様に分類されます。

上記を用いて、2枚目の葉をリーフのまま使用するのは「オレンジペコー(OP)」、それをカットしたものは「ブロークンオレンジペコー(BOP)」、さらにカットしたものは「ブロークンオレンジペコーファニングス(BOPF)」などと呼びます。

オレンジペコーのペコーは茶葉の新芽につく白い産毛を中国語で「白亳(ペイカウ)」と呼んでいたことからペコーと呼ばれるようになりました。オレンジの方は、紅茶の色を白い産毛の葉が吸収してオレンジ色に見えたから、白い産毛の茶葉が発酵して産毛がオレンジ色になったから、紅茶の色がオレンジ色だから...など諸説あるようです。

紅茶の種類

主な紅茶の種類を下記にあげます。よく聞く「セイロンティー」のセイロンはスリランカの旧国名で、ウバやヌワラ・エリヤなど、スリランカ産の紅茶全般を意味します。

ダージリン(インド)

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David J. Fred, CC BY-SA 2.5,
via Wikimedia Commons
インドのダージリン地方が産地で世界三大銘茶のひとつです。「紅茶のシャンパン」とも呼ばれます。若いファーストラッシュ、マスカットのような香りが楽しめるセカンドフラッシュ、渋みの加わるオータムナルなど収穫時期によって変わる味わいを楽しむことができます。ストレートティがおすすめ。

アッサム(インド)

Assam black tea
Paweł Więcek (evilcoven), CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
インドのアッサム地方を産地とする紅茶で世界最大の生産量を誇ります。1823年にアッサム種の茶葉が発見されたことからインドでの紅茶づくりが盛んになりました。濃厚で甘い香りを持ち、ミルクティーとして飲むのがおすすめです。チャイにも使われます。

ウバ(スリランカ)

Tea plantation Haputale
Adbar, CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
スリランカ ウバ州を産地とする紅茶で世界三大銘茶のひとつです。クオリティシーズンは7~9月頃でウバフレーバーと呼ばれるメントール系の香りとしっかりとした渋みがあり、カップに注ぐとゴールデンリング(コロナリング)と呼ばれる金色の輪が現れることがあります。ミルクティーがおすすめ。

ヌワラ・エリヤ(スリランカ)

Sri Lanka Teeplantage
Wolfgangbeyer, CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
スリランカ のヌワラ・エリヤ地方の高原(1,600~2,000m)を産地とする紅茶です。クオリティーシーズンは12月~2月。発酵時間が比較的短く、緑茶に似た渋みとほのかな花香があります。ストレートティーがおススメ。

アールグレイ

アールグレイは紅茶の産地や茶葉の銘柄ではなく、ダージリンやキームン等の茶葉にベルガモットという柑橘系の香りを加えたフレーバーティーの名称です。呼称は1830年代の英国首相グレイ伯爵(アールは伯爵の意味)に由来するといわれています。ストレート、アイスティー、ミルクティー様々なタイプで飲まれます。

その他のお茶

チャノキを使用しないお茶として、下記などがあります。

麦茶

Mugicha by CR 01
Corpse Reviver, CC BY-SA 3.0,
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チャノキではなく、大麦を焙煎して煮出します。夏場に冷やして飲むことが多く、カフェインが含まれていないので子供でも安心して飲むことができます。

ルイボスティー

Rooibos tea 2
KENPEI, CC BY-SA 3.0,
via Wikimedia Commons
南アフリカのセダルバーグ山脈にのみに生息するマメ目マメ科のルイボスの葉から作るハーブティーです。カフェインを含んでおらず、癖のない味わいとほのかな甘みで健康志向の人にも好んで飲まれています。

どくだみ茶

Houttuynia cordata Pstrolistka sercowata 2009-07-11 01
Agnieszka Kwiecień, Nova,
CC BY-SA 4.0,
via Wikimedia Commons
日本各地に分布するどくだみの葉を煎じたお茶です。ビタミン、ミネラル、フラボノイドが豊富で、美肌、デトックス、ダイエット、動脈硬化予防を期待した健康茶としてよく飲まれています。爽健美茶にも使われています。

ハブ茶

Senna‗obtusifolia
Pieria(Uploader and Photographer), Public domain,
via Wikimedia Commons
元々は「ハブソウ」の種子を原料としていましたが収穫量が少ないため、現在では「エビスグサ」の種子を炒って使用するものが大半です。エビスグサの種子を乾燥させた生薬を「決明子(ケツメイシ)」と呼び、音楽グループ名の由来にもなっています。

マテ茶

南米原産のモチノキ科のイェルバ・マテの葉や小枝を乾燥させてつくります。コーヒー・紅茶と並び世界三大飲料のひとつとされています。ビタミンやミネラルを豊富に含んでいて「飲むサラダ」ともいわれます。日本の緑茶とほうじ茶のように、緑色のものや、ローストしてほうじ茶色のものなどがあります。