とほほのお茶・紅茶入門
YAPC::Hiroshima 2024 で「記事ネタに困ってるので取り上げて欲しいものがあればメールください」とお願いしたところ、早速懇親会で「お茶入門お願いします!」と依頼が来たので、今週は「お茶・紅茶入門」いきます。オレンジペコーってオレンジ入ってなかったんだ...
目次
お茶・紅茶とは
- 緑茶、烏龍茶、紅茶などはすべて同じツツジ目ツバキ科ツバキ属チャノキ種 (学名:カメリア・シネンシス)の葉を用いていて、茶葉を摘んだ後の加工工程が異なります。
- 「チャノキ」以外から作られるお茶としては、麦茶、ドクダミ茶、ハブ茶、マテ茶などがあります。
世界三大飲料
最初「コーヒー・チャ・ココア」と紹介していたのですが、「コーヒー・紅茶・マテ茶」だという指摘をいただきました。「世界三大飲料」で検索すると「コーヒー・紅茶・マテ茶」とするサイトが多く、一部で「コーヒー・チャ(紅茶やお茶)・ココア」としているサイトがあるようでした。日本マテ茶協会はマテ茶推し。静岡県発行の[1]ではチャ推しでした。誰かが明確に定義しているものではないので、どちらが正しいというものではないのかもしれません。生産量から見ると、コーヒー(384万t)、ココア(137万t)、チャ(125万t)、マテ茶(82万t)のようです。
世界のお茶の呼び方
お茶の原産地は中国南西部からミャンマーあたりと言われています。お茶のことを、広東省では「チャ」、福建省では「テ」と呼んでいて、世界各国世界各国、これらの呼び方が伝わったものが多いようです。
- チャ:広東語、日本、韓国、イラン、ポルトガル、朝鮮など。
- チャイ:インド、モンゴル、トルコ、ロシア、ギリシャ、ペルシャなど。
- テ:福建省、フランス、イタリア、デンマークなど。
- テー:ドイツ、スペイン、オランダなど。
- ティー:イギリス、米国など。
変種による分類
「チャノキ」は下記の変種に大別されます。
- 中国種:中国、日本、台湾などで栽培され、緑茶や烏龍茶などに使用されます。葉の大きさは5cmくらい。
- アッサム種:インド、スリランカ、ケニアなどで栽培され、紅茶に使用されます。葉の大きさは15~20cmくらい。
発酵や製法による分類
最初、この記事では、お茶、烏龍茶、紅茶の違いを下記のような「発酵の度合いによる」と紹介していました。
- 不発酵茶:ほとんど発酵させないお茶です。摘採後熱処理(蒸し・炒り等)で発酵を止めます。茶葉は緑色のまま。緑茶になります。
- 半発酵茶:半分程度発酵させるお茶です。茶葉は青みがかかります。烏龍茶など。
- 弱発酵茶:少しだけ発酵させたお茶です。茶葉は白色になります。中国の白牡丹(パイムータン)など。
- 発酵茶:発酵させるお茶です。茶葉は赤みがかかります。紅茶になります。
- 後発酵茶:熱処理で茶番の発酵を一度止め、後から発酵させます。茶葉は黒色になります。中国のプーアル茶など。
しかし、上記のような発酵による分類は誤りで、2023年3月に ISO(国際標準化機構) が発行した国際規格 [6] が定める製法の違いが基準だという指摘をいただきました。ありがとうございます。この国際規格に従った分類によると、世界のお茶は加工方法の違いで下記の6種類に分類されるそうです。おおむね中国の茶の分類が世界基準になった感じですね。詳細はまた時間のある時に別途...
- 紅茶(Black tea)
- 緑茶(Green tea)
- 白茶(White tea)
- 烏龍茶(Oolong tea):別名として青茶も許容
- 黒茶(Dark tea)
- 黄茶(Yellow tea)
とは言え、上記の国際規格がリリースされたのもまだ1年ほど前で、まだどちらが「正しい」というものでもなく、今はまだこういう分類をしている人が居る、お茶を専門とする会社でも今はまだ「お茶の分類(伊藤園)」の様に発酵度合いで分類している会社もある。ISO ではこの様に分類している。ISO ではこの様に分類しているけど、世間ではこんな風に分類している。とか、そんな状態なのかなと思います。ISO に従うと「ほうじ茶」も多分「緑茶」なのだと思いますが、「緑茶買ってきて」と頼まれて「ほうじ茶」買ってくると怒られてしまいますもんね。ここが「規格」と「世間一般」の差であり、両方を知っておくことも必要なのではないかなと思っています。
日本茶
そのほか、茶葉を摘む順番として下記のような分類があります。
- 一番茶・二番茶・三番茶:その年に最初に摘み取られるのが一番茶で新茶とも呼ばれます。次に積まれるのが二番茶、最後に積まれるのが三番茶となります。一番茶の方がさわやかな味わいとなります。三番茶は番茶などに使用されます。
- 秋冬番茶:三番茶を摘まずに残しておき、秋口に摘んだものを呼び、番茶に利用される他、ポリサッカライドという多糖類が血糖値を下げるなど、健康面で取り上げられることがあります。
中国茶
中国茶の分類
中国のお茶は下記に分類されます。
- 緑茶:不発酵茶。緑色のお茶。熱処理を加えて発酵を止めます。龍井茶、碧螺春、緑牡丹など。
- 白茶:弱発酵茶。白毛が残る茶葉を少しだけ発酵させます。白っぽい茶葉になります。白毫銀針、白牡丹、寿眉など。
- 黄茶:弱後発酵茶。軽度の後発酵を行います。黄色っぽい茶葉になります。君山銀針、蒙頂黄芽など。
- 青茶:半発酵茶。発酵した褐色茶葉と不発酵の緑色茶葉が混ざりあい青っぽくなります。烏龍茶(ウーロン茶)など。
- 紅茶:発酵茶。緑茶を十分に発酵させてつくる中国の紅茶です。祁門紅茶(キームン紅茶)など。
- 黒茶:後発酵茶。緑茶を長期間、または麹菌を用いて紅茶よりもさらに発酵させます。普洱茶(プーアル茶)など。
中国十大銘茶
「中国十大銘茶」はいくつかあるようですが、Wikipedia では下記をあげています。
- 西湖龍井(緑茶)(せいころんじん:浙江省杭州西湖)
- 信陽毛尖(緑茶)(しんようもうせん:河南省信陽)
- 洞庭碧螺春(緑茶)(どうていへきらしゅん:江蘇省蘇州太湖洞庭山)
- 黄山毛峰(緑茶)(こうざんもうほう:安徽省黄山)
- 六安瓜片(緑茶)(ろくあんかへん:安徽省六安)
- 都勻毛尖(緑茶)(といんもうせん:貴州省都勻)
- 君山銀針(黄茶)(くんざんぎんしん:湖南省岳陽洞庭湖君山島)
- 武夷岩茶(青茶)(ぶいがんちゃ:福建省武夷山の烏龍茶)
- 安渓鉄観音(青茶)(あんけいてっかんのん:福建省安渓の烏龍茶)
- 祁門紅茶(紅茶)(きもんこうちゃ:安徽省祁門)
中国茶のいろいろ
紅茶
Wikipediaでは「茶葉や茶の芽を萎凋(乾燥)させ、もみ込み、完全発酵させ、乾燥させたもの」と紹介されています。あまり発酵させなくても紅茶に分類したりなど、ISOの分類法によると少し定義が変わっているかもしれません。お茶の色はおおむね紅色をしています。インド、スリランカ産のものが多く欧州でも広く飲まれています。
飲み方
- ストレートティー:紅茶の茶葉をお湯で抽出し、ミルクやレモンなどは入れずそのまま飲みます。砂糖は少々入れてもストレートティーと呼ばれたりしています。紅茶の茶葉の味わいをそのまま楽しむことができます。
- アイスティー:紅茶を冷やして飲みます。氷を入れるとすこし薄くなることもあり、味のはっきりした渋みのある紅茶をベースにします。ミルクやレモンを入れて飲むこともあります。
- ミルクティー:紅茶にミルクを入れて飲みます。コーヒーフレッシュを入れたものは厳密にはミルクティーではありませんが、ミルクティーとして提供する喫茶店も多いようです。紅茶にミルクを入れる派とミルクに紅茶を入れる派があるようです。
- ロイヤルミルクティー:和製英語ですが、少量のお湯で抽出した紅茶に多めのミルクを注いだものや、それを温めたもの、最初からミルクで抽出するものなどがあります。ミルクの甘みをより強く感じることができます。
- ブレンドティー:異なる種類の紅茶の茶葉をブレンドしたものを言います。1902年に英国国王エドワード七世のために作られたロイヤルブレンド(アッサム+セイロン)が有名です。
- フレーバーティー:紅茶に果実などのフレーバー(香りづけ)を加えたものです。アップルティー、レモンティーなどの他、柑橘系のベルガモットを加えたアールグレイなどがあります。後述しますがオレンジペコーはフレーバーティーではありません。
- チャイ:インドで好んで飲まれます。少量の水で抽出した後ミルクを加えて煮ます。砂糖を加えて甘めにすることが多く、さらにシナモン、胡椒、生姜などの香辛料を加えたマサーラー・チャイも飲まれます。
- ロシアンティー:ロシアで好んで飲まれます。紅茶にジャムを添えます。日本では紅茶にジャムを加えて飲むことが多いですが、ロシアでは紅茶には入れず、ジャムを舐めながら紅茶を楽しむのが主流です。
世界三大銘茶
日本では下記の産地の紅茶を世界三大銘茶と呼んでいます。日本以外ではあまり用いられることはなく、世界的にはウバよりもヌワラ・エリヤやルフナの方が人気が高かったりもします。
- ダージリン (インド)
- ウバ (スリランカ)
- キームン (中国)
クオリティーシーズン
紅茶にはそれぞれ収穫に適した時期があり、クオリティーシーズンと呼ばれます。例えばウバは7~9月頃、ヌワラ・エリヤは12~2月など。インドのダージリンやアッサムは春、夏、秋の収穫を下記の様に呼びます。ダージリンはファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、オータムナルそれぞれの収穫時期の違いを楽しんだりします。アッサムはセカンドフラッシュが人気が高いようです。
- ファーストフラッシュ:春摘み。一番摘み。ダージリンは3~4月頃。アッサムは2~4月頃。
- セカンドフラッシュ:夏摘み。二番摘み。ダージリン、アッサム共に5~6月頃。
- オータムナル:秋摘み。ダージリンは10~11月頃。アッサムは9~11月頃。
参考:
標高
スリランカの紅茶では、産地の標高による分類を行っています。
- ハイグロウンティー(高地産):標高4,000ft(約1,300m)以上。高級品。品のよい渋みと香り。ウバ、ヌワラエリヤなど。
- ミディアムグロウンティー(中地産):標高2,000~4,000ft(約670~1,300m)。力強いコクと香り。キャンディなど。
- ローグロウンティー(低地産):標高2,000ft(約670m)以下。どっしりとした味わいと甘み。ルフナ、サバラガムワなど。
茶葉のグレード
オレンジペコーという名前をよく聞きますが、これはオレンジが入ったフレーバーティーではなく、茶葉の等級を表します。これもまた先端のものや大きければよいという訳ではなく、茶葉の種類によって適したものが好まれます。
まず、茶葉の穂先から何枚目の葉を使用するかがあります。
- フラワリーオレンジペコー(FOP):穂先の新芽を使用します。
- オレンジペコー(OP):先端から2枚目の葉を使用します。最も標準的なリーフです。
- ペコー(P):先端から3枚目の葉を使用します。主に加工用や工業用として使用されます。
- ペコースーチョン(PS):先端から4枚目の葉を使用します。
- スーチョン(S):先端から5枚目。あまり使用されることはありませんがラプサンスーチョンという銘柄もあります。
また、葉をそのまま使用するか、カットの大きさによって下記の様に分類されます。
- ホール:茶葉をそのまま使用します。7~11mm程度の長さがあります。
- ブロークン(B):茶葉を2~3mm程度にカットします。
- ファニングス(F):ブロークンよりもさらに細かくカットします。1~2mm程度。
- ダスト(D):ファニングスよりもさらに細かくカットして 0.3~0.5mm程度の粉状になったものです。
- CTC:茶葉をつぶして(Crush)、裂いて(Tear)、丸め(Curl)ます。早く抽出されるのでティーバック向きです。
上記を用いて、2枚目の葉をリーフのまま使用するのは「オレンジペコー(OP)」、それをカットしたものは「ブロークンオレンジペコー(BOP)」、さらにカットしたものは「ブロークンオレンジペコーファニングス(BOPF)」などと呼びます。
オレンジペコーのペコーは茶葉の新芽につく白い産毛を中国語で「白亳(ペイカウ)」と呼んでいたことからペコーと呼ばれるようになりました。オレンジの方は、紅茶の色を白い産毛の葉が吸収してオレンジ色に見えたから、白い産毛の茶葉が発酵して産毛がオレンジ色になったから、紅茶の色がオレンジ色だから...など諸説あるようです。
紅茶の種類
主な紅茶の種類を下記にあげます。よく聞く「セイロンティー」のセイロンはスリランカの旧国名で、ウバやヌワラ・エリヤなど、スリランカ産の紅茶全般を意味します。
その他のお茶
チャノキを使用しないお茶として、下記などがあります。
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初版:2024年3月17日、最終更新:2024年3月24日
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