とほほのお酒入門
目次
お酒とは
- アルコールを含む飲料です。
- 日本の酒税法では「アルコール分1度以上の飲料」と定められています。
- 製法によって「醸造酒」「蒸留酒」「混成酒」の3種に大別されます。
- 日本の法律では上記3種に加えて「発泡性酒類」を定めています。
- 醸造酒
- 果実や穀物の糖分をアルコール発酵させ、蒸留せずにそのまま飲むものです。1%~15% 程度の低いアルコール度数となります。果実系だと ワイン、穀物系だと ビール や 日本酒 などがあります。
- 蒸留酒
- 醸造酒を蒸留(一度気化させてから冷却して液体にすること)してから飲むものです。20%~40% など比較的高いアルコール度数となります。ウイスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム などがあります。
- 混成酒
- 醸造酒や蒸留酒に果実や香料などを混ぜて飲むものです。アルコール度数には様々なものがあります。リキュール、梅酒、チューハイ などがあります。アルコール度数は様々です。
- 発泡性酒類
- 日本の酒税法による分類で、①ビール、②発泡酒、③その他の発泡性酒類(第三のビールやチューハイ等)に分類されます。製法ではなく税率を定める目的で分類されています。
ワイン(wine)
ブドウを発酵させてつくるられる 醸造酒 です。
ワインの製法
ワインは製法によって下記に分類されます。
- スティルワイン
- スティル(still)は静か、動かないといった意味を持ちます。泡の無い(非発泡性)の通常のワインで最もよく飲まれています。製法によって 赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン に分類されます。
- スパークリングワイン
- 発泡性のあるワインの総称です。最も有名なのはフランスシャンパーニュ地方で作られる シャンパン ですが、スペインの カヴァ などもあります。白ワインベースのものが多いですが、赤ワインやロゼワインベースのものもあります。
- フォーティファイドワイン
- 製造中にアルコールを加えてアルコール度数を 15~22度程度まで高めたものです。辛口のものは食前酒などで飲まれ、甘口のものはデザートで使用されたりします。シェリー酒、ポートワインなど。
- フレーバードワイン
- ハーブやスパイスなどの蒸留酒や果汁などを加えたものです。アロマタイズドワインとも呼ばれます。スペインのサングリア、イタリアのヴェルモット、フランスのキールなどが有名です。
赤ワイン・白ワイン・ロゼワイン
赤ワイン、白ワイン、ロゼワインは下記の様な違いがあります。
- 赤ワイン
- 赤いワインです。黒ブドウを皮や種も一緒に付け込んで発酵させるため赤色になります。赤ワインの特徴である渋味成分(タンニン)を多く含み、肉料理に合います。冷やしすぎると渋みが強くなるので、白ワインよりは高めの温度(10~18度)で飲むことが多いようです。
- 白ワイン
- 白いワインです。白ブドウを主に使用し、皮や種を取り除いて作られるため白色のワインとなります。軽い口当たりで魚料理に合います。赤ワインよりは低めの温度(5~14度)で飲むことが多いようです。
- ロゼワイン
- ピンク色のワインです。黒ブドウを皮や種も一緒に付け込んで早い段階で取り除いたり、赤ワインと白ワインを混成して発酵させたりいくつかの製法があります。温度も白ワインと赤ワインの中間くらい(7~14度)が多いようです。
ワインの名前(産地・品種・人名)
ワインは「産地」や「品種」や「人名」などで呼ばれます。
- 産地
- ボルドー(Bordeaux)(赤)、ブルゴーニュ(Bourgogne)(赤)、シャブリ(Chablis)(白)、シャンパーニュ(Champagne)(スパークリング)など。
- 品種
- カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)(赤)、ピノ・ノワール(Pinot noir)(赤)、メルロー(Merlot)(赤)、シャルドネ(Chardonnay)(白)、リースリング(Riesling)(白)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon blanc)(白)など。
- 人名
- ドン・ペリニヨン(Dom Pérignon)(シャンパン)、ロマネ・コンティ(Romanée-conti)(畑の名前だが元々は18世紀の人名から)など。
旧世界と新世界
世界のワインは「旧世界」と「新世界」に分類されます。
- 旧世界
- ヨーロッパを中心として、古くからワインを生産してきた国々です。フランス、イタリア、イタリア、ドイツなど。新世界に比べてブレンドしたワインが多いです。
- 新世界
- 比較的新しくワインを生産しはじめた国々です。アメリカ、チリ、オーストラリア、日本など。旧世界に比べて単一品種で作られるワインが多いです。
ワインの格付け
- フランスワイン(旧法~2008年)
- 「AOC(Appellation d'Origine Contrôlée)」>「A.O.V.D.Q.S.(Appellation d’Origine Vin Delimite de Qualite Superieure)」>「Vin de Pays」>「Vin de Table」の順で格付けされていました。AOC はさらに「Appellation 地名 Contrôlée」の表記で地名が 畑名>村名>地方名 のように地域が限定されるほど高級となります。
- フランスワイン(新法2009年~)
- 「AOP(Appellation d'Origine Protégée)」>「IGP(indication géograghique protégée)」>「Vin de Table」の順で格付けされています。AOP がさらに「Appellation 地名 Protégée」で格付けされるのは AOC と同様です。
- ブルゴーニュワイン
- 「グラン・クリュ(特急畑:Grandes Crus)」>「プルミエ・クリュ(一級畑:Premieres Crus)」>「コミュナル(村名:Communales) または ヴィラージュ(村名:Villages)」>「レジョナル(地域名:Regionales)」の順で格付けされています。
- ボルドーワイン
- 「プルミエ・グラン・クリュ(Premiers Grands Crus)」>「ドゥジエム・グラン・クリュ(Deuxiemés Grands Crus)」>「トロワジエム・グラン・クリュ(Troisiemés Grands Crus)」>「カトリエム・グラン・クリュ(Quatriemés Grands Crus)」>「サンキエム・グラン・クリュ(Cinquiemés Grands Crus)」の5階級に61のシャトーが格付けされています。
- イタリアワイン(旧法~2008年)
- 「DOCG(Denominazione di Origine Controllata e Garantita)」>「DOC(Denominazione di Origine Controllata)」>「IGT(Vino a Indicazione Geografica Protetta)」>「VdT(Vino da Tavola)」
- イタリアワイン(新法2009年~)
- DOCG と DOC が DOP に統合され、「DOP(Vino a Denominazione di Origine Protetta)」>「IGP(Vino a Indicazione Geografica Protetta)」>「Vino」の3階級となりました。
その他ワイン用語
- エチケット:フランスワインのラベル。
- グラン:偉大な。英語のグレート?
- プルミエ:一級の。プレミアな。
- クリュ:畑。
- シャトー:ワインの醸造所・生産者。
- ワイナリー:ワインを生産する会社などの事業者。
- ボジョレー・ヌヴォー:フランス南部ブルゴーニュ地方のボジョレー地区で生産される赤ワインの新酒。ヌヴォーは新しいの意味。早く出荷するために炭酸ガスを用いた特別な製法。11月第3木曜日に発売され、日本が最初の解禁国となることからブームに。その年のぶどうの収穫を祝ったワインとか、ぶどうの出来をチェックするための試飲用ワインが元とか諸説あり。秋に収穫して11月に販売するため軽く若くフレッシュな味わい。
シードル(cider)
リンゴから作る醸造酒です。リンゴの他にも梨を用いたピアシードルなどもあります。アルコール度数は2~8%程度。非発泡性のものもありますが特に英国では発泡性のものが多いようです。日本では発泡性のあるドリンクをサイダー(cider)と呼びますがフランス語のシードル(cider)が語源と思われます。米国ではciderはリンゴジュース、英国ではリンゴ酒をさすことが多いようです。
はちみつ酒(honey wine)
ハチミツから作る醸造酒です。ハチミツに水を加えて放置するだけで生成できるためワインやビールよりも歴史は古く、旧石器時代末頃には飲まれていたといいます。英語ではミード(mead)とかハニーワイン(honey wine)などと呼ばれます。度数は5~15度。12度程度のものが多いようです。飲み方はストレート、ロック、ソーダ割、ホット、フローズン、カクテルなど様々です。
ビール(beer)
麦芽・ホップ・水を原料とした発泡性のあるアルコール飲料です。
ビールの製法
- 発芽:大麦の種を発芽させて麦芽とします。
- 焙燥:麦芽に熱風を当て成長を止めます。これをモルトと呼びます。
- 粉砕:モルトを粉砕します。
- 糖化:粉砕したモルトと温水、必要に応じて米やとうもろこし等の副材料を加え、糖化させます。
- 濾過:糖化したモルトを濾過して麦汁を作ります。
- 煮沸:麦汁にホップを加えながら煮沸します。
- 発酵:酵母を加え1週間程度程度発酵させます。これを若ビールと呼びます。
- 貯酒:若ビールをタンクに入れ0度くらいで2週間程度熟成させます。
- 濾過:上記を濾過して酵母を取り除きます。濾過の代わりに熱処理で取り除くこともあります。
- 瓶詰:濾過したビールを瓶に詰めて出荷します。
ラガービール・ドラフトビール・生ビール
日本におけるビールの名称は公正取引委員会の「ビールの表示に関する公正競争規約」で取り決められています。
- ドラフトビール
- 日本では上記規約で「熱処理していないビール」と定めています。しかし、海外では異なります。ドラフト(draft)は「注ぐ」という意味があり、欧州では熱処理の有無に関係なく樽から注いだ「樽出しビール」をドラフトビールと呼ぶことが多いようです。ただし、米国では樽出しビールに加えて熱処理していないビールもドラフトビールと呼んだり、逆にカナダでは樽出しで且つ熱処理をしないもののみをドラフトビールと呼ぶなど各国様々の様です。
- 生ビール
- 昔は瓶や缶ビールは酵母を取り除くために熱処理することが多かったのですが、1967年にサントリーが熱処理しない「純生」を発売。翌年アサヒが熱処理せず酵母を残した「本生」を発売。酵母の有無を巡る「生ビール論争」が勃発しましたが、公正取引委員会の告示により酵母の有無にかかわらず「熱処理していない」ビールを「生ビール」と呼ぶようになりました。日本では生ビール=ドラフトビールです。現在では熱処理しなくても濾過で十分酵母を取り除くことができ、大半の瓶・缶ビールも中身は熱処理をしない生ビールとなっています。キリンラガーも1996年に非熱処理(生ビール)になりました。
- ラガービール
- 熱処理していないものが生ビール=ドラフトビール、熱処理したものがラガービールという誤解もありますが、ラガーは「貯蔵」の意味。上記規約では、熱処理の有無にかかわらず「貯蔵工程で熟成させたビール」と定められています。
- 黒ビール
- 上記規約で「濃色の麦芽を原料の一部に用いた色の濃いビール」と定められています。
- スタウトビール
- 上記規約で「濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビール」と定められています。
ビール・発泡酒・第三のビール
ビール系飲料を日本の法律(酒税法、酒税法施行令、酒税法施行規則)では下記に分類しています。
- ビール
- 水とホップを除いた原料の内、麦芽比率が67%以上、副原料として認められたもの(下記の①)のみを使用し、アルコール度数が20%未満のものがビールとされていました。2018年の法改正で麦芽比率は50%以上となりました。これにより一部の発泡酒もビールに格上げされました。また、5%以下であれば果実等(下記の②)も加えてよいことになりました。これによりフレーバービールが楽しめる様になりました。
- 麦、米、とうもろこし、こうりやん、ばれいしよ、でん粉、糖類又は財務省令で定める苦味料若しくはカラメル。
- 果実(乾燥果実・煮つめた果実・濃縮果汁を含む)、コリアンダー(またはその種)、胡椒、シナモン、クローブ、山椒その他の香辛料又はその原料、カモミール、セージ、バジル、レモングラスその他のハーブ、甘藷、かぼちやその他の野菜(乾燥野菜・煮つめたものを含む)、そば、ごま、蜂蜜その他の含糖質物、食塩、みそ、花、茶、コーヒー、ココア、かき、こんぶ、わかめ、かつお節。
- 発泡酒
- 麦芽又は麦を原料の一部とした酒類で発泡性を有しアルコール分が20%未満でビールに該当しないもの。つまり、麦芽または麦を使用しているけれども、麦芽比率が50%未満だったり、②が5%より多かったり、①や②以外のものを使用していると発泡酒に分類されます。麦芽比率によって税率が分けられていましたが、2026年からはビールと同率となります。
- その他の発泡性酒類(苦味のあるもの)=第三のビール=新ジャンル
- 上記のビールや発泡酒に分類されない発泡性を有するもので、アルコールが10%(2026年10月からは11%)未満で、苦味成分のあるもの。麦芽や麦を使用せず豆類やトウモロコシなどから生成するもの、または、発泡酒に別のアルコールを混ぜたものなどになります。以前はチューハイ並みに税率を抑えることができていましたが、苦味があるものはビール系飲料と見なされて税率があがります。ビールの名前を付けるのは消費者を混乱させる可能性があることから、酒造メーカーでは「新ジャンル」と呼んでいます。
- その他の発泡性酒類(苦味のないもの):チューハイ等
- 上記とほぼ同じ条件で、ただし、苦味成分のないもの、つまりチューハイなどがこれに分類されます。
ビール系飲料の税率
ビール系飲料やチューハイ、ワイン、日本酒などの 350ml あたりの酒税は下記の様になります。税金を安くする目的もあり生まれた発泡酒や第三のビールですが、2026年10月からはすべて同じ税率となります。
| ~2020年9月30日 | 2020年10月1日~ | 2023年10月1日~ | 2026年10月1日~ |
ビール | 77.00円 | ↘ 70.00円 | ↘ 63.35円 | ↘ 54.25円 |
発泡酒(50%-) | 77.00円 | ↘ 70.00円 | ↘ 63.35円 | ↘ 54.25円 |
発泡酒(25-50%) | 62.34円 | ↘ 58.49円 | ↘ 54.25円 | → 54.25円 |
発泡酒(-25%) | 46.99円 | → 46.99円 | → 46.99円 | ↗ 54.25円 |
第三のビール/新ジャンル | 28.00円 | ↗ 37.80円 | ↗ 46.99円 | ↗ 54.25円 |
チューハイ等 | 28.00円 | → 28.00円 | → 28.00円 | ↗ 35.00円 |
ワイン | 28.00円 | ↗ 31.50円 | ↗ 35.00円 | → 35.00円 |
日本酒 | 42.00円 | ↘ 38.50円 | ↘ 35.00円 | → 35.00円 |
日本酒
日本酒と清酒
米を主成分とした日本の酒全般を 日本酒、その中で醪(もろみ)を濾して透き通ったものを 清酒 と呼んでいました。酒税法では透き通らなくても少しでも濾したものであれば 清酒 と分類しています。また、2015年制定の 地理的表示(GI)では 日本酒 は清酒の中でも日本の米・米麹を用いて日本国内で生産されたものという定義が行われました。これにより、広義の日本酒 ⊃ 清酒 ⊃ 狭義の日本酒 という包含関係となりました。
本醸造と吟醸と純米
玄米からぬかや胚芽を取り除き精米しますが、日本酒はさらに雑味の元となる米の外側を削り芯の部分のみを使用します。この削り具合を 精米歩合 と呼び、精米歩合が 70% 以下のものを 本醸造、60% 以下のものを 吟醸、50% 以下のものを 大吟醸 と呼びます。また、原材料に米・米麹のみを用いたものを 純米 と呼びます。純米大吟醸 は精米歩合 50% 以下で、米・米麹のみを使用したものになります。
どぶろくとにごり酒
どぶろく と にごり酒 は漢字で書くと 濁酒、濁り酒 となりよく似てますが、どぶろく(濁酒) は米・米麹・水を発酵させて醪(もろみ)を濾さないままで出荷するお酒です。濾さないので清酒ではありません。にごり酒(濁り酒) は どぶろく(濁酒) を白濁が残る程度に濾したものになります。少しでも濾すので現在の酒税法では清酒に分類されます。
辛口と甘口
水に対する酒の比重が重いか軽いかで 日本酒度 が決まります。4℃の水と同じであれば ±0、水の方が軽ければ(酒の方が重ければ)マイナス、水の方が重ければ(酒の方が軽ければ)プラスとなります。最初は糖分が多いので水の方が軽くマイナス、発酵が進んで糖がアルコールに変わると水の方が重くプラスの値となります。一般に -1.4~+1.4 を中庸として、それより軽いものが甘口、重いものが辛口となります。
ウイスキー
大麦、ライ麦、トウモロコシなどを発酵させ、蒸留した蒸留酒。樽で寝かせることにより樽の成分が溶け出し琥珀色になります。蒸留酒なのでアルコール度数は高めで 40度程度のものが多いです。
飲み方
- ストレート:水や氷を入れずにそのまま飲みます。グラスに3分の1程度を注ぎ、香りを楽しみながら少量ずつ味わいます。
- オン・ザ・ロック:冷えたグラスに大き目の氷を入れ、ウイスキーを注いで混ぜます。
- ハーフロック:冷えたグラスに大き目の氷を入れ、ウイスキーを注いで混ぜたのち、ウイスキーと同量の水を入れて軽くまぜます。
- トワイスアップ:グラスにウイスキーを注ぎ、ウイスキーと同量の水(常温)を注ぎます。常温とすることで香りを楽しめます。
- 水割り:グラスに氷を入れ、ウイスキーを注ぎ、水を注ぎます。ウイスキー1に対して水2~2.5程度の割合がおススメと言われます。
- ハイボール:グラスに氷を入れ、ウイスキーを注ぎ、ソーダで割ります。居酒屋で多い飲み方。
- ホットウイスキー:耐熱グラスにウイスキーを入れ、2~3倍のお湯で割ります。ハーブやジャムなどをトッピングすることもあります。
- ミスト:冷えたグラスにクラッシュアイスを入れ、ウイスキーを注いで混ぜます。グラスに水滴がつくことからミスト(霧)と呼ばれます。
- ウイスキーフロート:グラスに氷を入れ、7分目くらいまで水を注ぎ、ウイスキーをマドラーに添わせて静かに表面のみに注ぎます。
世界五大ウイスキー
- スコッチウイスキー:英国スコットランドで生産されるウイスキー。麦芽を乾燥させる際に燃焼させる泥炭(ピート)によるスモーキーな香りが特徴です。世界のウイスキー生産量の約7割を占めます。
- モルトウイスキー:大麦麦芽(モルト)のみを使用。ラウドスピリッツ(声高な酒)とも呼ばれ個性的で豊かな風味があります。モルト100%という意味で ピュアモルト と呼ばれることもありましたが、現在のスコッチウィスキーではピュアモルトという表記は禁止されているそうです。モルトウィスキーの中でも単一の蒸留所で生産されるものを シングルモルト、複数の蒸留所のものをブレンドしたものを ブレンデッドモルト と呼びます。シングルモルトとしてマッカラン、ボウモアなどの銘柄があります。
- グレーンウイスキー:大麦麦芽以外のトウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物(グレーン)を使用します。サイレントスピリッツ(寡黙の酒)とも呼ばれ、柔らかく静かな味わいになります。キャメロンブリッジなどの銘柄があります。
- ブレンデッドウイスキー:モルトウイスキーとグレーンウイスキーの原酒をブレンドして作ります。モルトウイスキーの風味とグレーンウイスキーの軽やかさを兼ね備えます。バランタイン、オールドパー、ジョニーウォーカー、カティサーク、ホワイトホースなどの銘柄があります。
- アイリッシュウイスキー:アイルランド共和国、および英国の北部アイルランドで生産されるウイスキー。泥炭(ピート)を使用しないため、軽やかで雑味が少なく、スッキリとした味わいが特徴です。ジェムソン、カネマラ、タラモアデュー、ブッシュミルズなどのブランドがあります。
- モルトウイスキー:スコッチウイスキーの説明を参照。
- グレーンウイスキー:スコッチウイスキーの説明を参照。
- ブレンデッドウイスキー:スコッチウイスキーの説明を参照。
- ピュアポットスティルウイスキー:大麦麦芽(モルト)と未発酵大麦やオート麦などを使用。単式蒸留器(ポットスティル)で3回蒸留し、軽快で飲みやすいウイスキーとなります。
- アメリカンウイスキー:アメリカで生産されるウイスキー。トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦などを原料とします。
- コーンウイスキー:トウモロコシを80%以上使用。熟成しない無色透明なものや、熟成させる場合も焼焦がししていない樽や古い樽を使用して比較的短期間(6カ月程度)なものが多く、薄い色となります。荒々しさと甘いコーンの香りが楽しめます。ジョージアムーン、メロウコーンなどの銘柄があります。
- バーボンウイスキー:トウモロコシを51~79%使用。ケンタッキー州を中心として生産。アメリカの法律では、米国内で生産、トウモロコシを51%以上使用、度数80%以下で蒸留、62.5%以下で貯蔵、40%以上で瓶詰めなどの製法が決められています。ジム・ビーム、ワイルドターキー、アーリータイムス、I.W.ハーパー、フォア・ローゼス、メーカーズマークなどの銘柄があります。
- テネシーウイスキー:原料や製法はバーボンウイスキーと同じですが、テネシー州で作られます。蒸留直後にシュガーメイプルの炭で濾過(チャコール・メローイング製法)するため、フルーティーな香りが加わり、飲みやすい味わいになります。ジャックダニエルなどの銘柄があります。
- モルトウイスキー:大麦を51%以上使用します。スコッチでは単一蒸留所のものをシングルモルトと呼びますが、アメリカではシングルモルトの定義はなく、スコッチのシングルモルトとは若干異なるものもあるようです。シアトル発のウエストランドなどの銘柄があります。
- ウィート(ホイート)ウイスキー:小麦を51%以上使用します。内側を焼焦がした新樽で熟成させます。癖が少なく、まろやかで柔らかい味わいとなります。バーンハイムなどの銘柄があります。
- ライウイスキー:ライ麦を51%以上使用します。カナダでも多く作られます。スパイシーでピリッとした辛口のウイスキーでほろ苦さと香ばしさを味わえます。ワイルドターキー・ライ、ジムビーム・ライ、ノブクリーク・ライなどの銘柄があります。
- カナディアンウイスキー:カナダのウイスキー。米国が禁酒法を行っている時代に生産を伸ばしました。カナダの法律では、穀類のみを原料とし、麦芽により糖化し、酵母で発酵させ、カナダ国内で蒸留し、700リットル以下の樽で3年以上熟成させるなど細かな製法が決まっています。トウモロコシを主原料とするベースウイスキーと、大麦やライ麦を主原料とするフレーバリングウイスキーをブレンドした、軽やかでありながら香味豊かな味わいとなります。カラメルやフレーバーを添加したものもあります。銘柄はカナディアン・クラブなど。
- ジャパニーズウイスキー:歴史は浅いながらも高い品質と味わいで世界からも認められています。NHK連続テレビ小説「マッサン」のモデルとなった竹鶴政孝がスコットランドで学び、寿屋(現サントリー)の山崎蒸留所所長として、また、ニッカウヰスキー創業者として日本のウイスキーを広めたことから、スコッチウイスキーと似た風味を持ちます。モルトウイスキーとして山崎、余市、白州、竹鶴、グレーンウイスキーとして知多、ブレンデッドウイスキーとして響、ブラックニッカ、角などがあります。
ウイスキーのスペルは、スコッチウイスキー、カナディアンウイスキー、ジャパニーズウイスキーでは whisky、アイリッシュウイスキーとアメリカンウイスキーでは whiskey となります。
シングル・ダブル・ワンフィンガー・ツーフィンガー
グラスに注ぐウイスキーの量を シングル や ダブル などで表現します。
- シングル:通常量。日本や米国では30mlですが、英国では45ml、スコットランドでは60mlなど、地域によって差異があります。
- ダブル:シングルの二倍のウイスキーを入れるもの。
- ワンフィンガー:人差し指1本分の量。おおむねシングル。
- ツーフィンガー:人差し指と中指2本分の量。おおむねダブル。1986年のサントリーのCMで流行しました。
ブランデー
ぶどうなどの果実から生成した酒を蒸留したものです。主に白ブドウが用いられます。樽で熟成する間に琥珀色になる点はウイスキーと似ていますが、穀物から作られる蒸留酒がウイスキー、果実から作られる蒸留酒がブランデーとなります。ウイスキーよりも少し気品の高い位置づけとされ、冷やさず、常温のブランデーを少量、香りを楽しみながら飲むのが一般的とされています。
熟成年数
熟成年数により下記のようなラベリングが行われることがあります。年数は色々異なります。
- ワンスター(1 star):3~4年熟成させたもの。
- ツースター(2 star):5~6年熟成させたもの。
- スリースター(3 star):7~10年熟成させたもの。
- VO(Very Old):11~15年熟成させたもの。
- VSO(Very Superior Old):16~20年熟成させたもの。
- VSOP(Very Superior Old Pale):20~30年熟成させたもの。
- VVSOP(Very Very Superior Old Pale):40年以上熟成させたもの。
- ナポレオン(Napoléon):VSOPよりも高級なもの。
- XO(eXtra Old):50年程度熟成させたもの。
- Hors d'âge(オールダージュ), Extra(エクストラ), Heritage(ヘリテージ)など:XO よりさらに高級なもの。
コニャック
フランスコニャック地方で生産されるブランデーです。熟成年数は コント と呼ばれ、等級は下記の様に定められています。
- スリースター(3 star):コント2以上。
- VS(Very Special):コント2以上。(平均4~7年)
- VSOP(Very Superior Old Pale):コント4以上。(平均7~10年)
- ナポレオン(Napoléon):コント6以上。(平均12~15年)
- XO(eXtra Old):コント10以上。(平均20~25年)
- オールダージュ(Hors d'âge):XOよりも高級なもの。
焼酎
日本の蒸留酒で麦、芋、米などを発酵させたものを蒸留して作ります。蒸留酒ですがウイスキー、ブランデーよりは度数は低く20~25度のものが多いです。
麦焼酎・芋焼酎
原材料により色々な焼酎があり、すっきりとした味わいの 麦焼酎(いいちこ、二階堂など)、芳醇な香りの 芋焼酎(黒霧島、さつま白波、森伊蔵、佐藤黒、佐藤白、村尾、魔王など) などがあります。この二者が大半を占めますが、米焼酎(八海山など)、しそ焼酎(鍛高譚など)、そば焼酎(雲海など) などもあります。
白麹・黒麹・黄麹
黄麹 は日本で古くから使用されている麹です。白麹・黒麹の登場で少なくなりましたが、淡麗で壮快な味わいがあり、近年、黄麹の焼酎も増えています。黒麹 は沖縄の泡盛で使用されていた麹で芳香な香り、コク、旨味があり、黒霧島、佐藤黒などで使用されています。白麹 は黒麹が突然変異したもので軽快でマイルドな味わいになり、白霧島、佐藤白などで使用されています。
甲類・乙類
甲類 は廃糖密や酒粕などを原料とし、何度も蒸留を繰り返すもので、味わいは薄くチューハイなどに用いられます。乙種 は米・麦・芋などを原料とし、一度だけ蒸留を行うもので、味わいが深く本格焼酎とも呼ばれます。甲よりも乙の方が安いイメージがありますが、一般的には甲類の方が安価になります。最近では甲類を 連続式蒸留焼酎、乙類を 単式蒸留焼酎 と呼ぶようになりました。
ウォッカ
ロシアで生産される大麦・小麦・ライ麦・ジャガイモなどの穀物・芋類を原料とした蒸留酒です。白樺の炭で濾過するのが特徴です。アルコール度数は40度程度のものが多いですが、スピリタスのように96度のものもあります。ウォッカをベースとするカクテルには下記などがあります。
- モスコー・ミュール:ウォッカ+ジンジャービール+ライムジュース。モスクワ(ウォッカ)のラバ(キックの強い酒)。
- スクリュー・ドライバー:ウォッカ+オレンジジュース。度数が高い割に甘くて飲みやすい。レディ・キラーとも。
- ソルティ・ドッグ:ウォッカ+グレープフルーツジュース。グラスの縁をレモンで濡らして塩をつける。
- ブラッディ・メアリー:ウォッカ+トマトジュース+レモンジュース。塩コショウなどのスパイスを加えることも。
ラム酒
サトウキビの糖密やしぼり汁を発酵・蒸留させて作ります。カリブ海あたりが原産地といわれています。度数は 40度のものから、ロンリコ(75.5度)など度数の高いものもあります。透明な ホワイト・ラム、薄い褐色の ゴールド・ラム、濃い褐色の ダーク・ラム などがあります。ラム酒をベースとするカクテルには下記などがあります。
- モヒート:ラム+ライムジュース+ミント+砂糖+炭酸水。爽やかなカクテル。
- ダイキリ:ホワイトラム+ライム汁+砂糖。スッキリしたショートカクテル。
- キューバ・リブレ(ラム・コーク):ラム+ライムジュース+コーラ。キューバの独立を祝ったカクテル。
- ブルーハワイ:ホワイトラム+ブルーキュラソー+パイナップルジュース+レモンジュース。青い海をイメージ。
- XYZ:ラム+コアントロー+レモンジュース。度数約40度の強いカクテル。
- ホット・バタード・ラム:ラム+バター+角砂糖+お湯。冬の定番ホットカクテル。
ジン
大麦・ライ麦・ジャガイモなどを発酵・蒸留させて作ります。元々は薬種としてオランダで生産されました。ジュニパーベリーの球果により独特の香りがつきます。度数は40度程度。カクテルによく使用されます。ジンをベースとするカクテルには下記などがあります。
- ジン・トニック:ドライジン+トニック+ライム。すっきりした味わい。
- ジン・バック:ジン+レモンジュース+ジンジャーエール。バックは牡鹿の意味。牡鹿に蹴られたように強く効くカクテル。
- ジン・フィズ:ジン+レモンジュース+ソーダ+砂糖。さっぱりした味わい。
- ギムレット:ジン+ライムジュース。ギムレットは錐(キリ)の意味。鋭く突き刺すような味わい。
- マティーニ:ジン+ドライ・ベルモット+オリーブの実。カクテルの王様の異名を持つ。
テキーラ
アガベ・アスル(正式名:アガベ・テキラナ・ウェベル・バリエダ・アスル)という見た目はアロエに似た植物を51%以上使用した蒸留酒です。メキシコで生産されます。テキーラをベースとするカクテルには下記などがあります。
- マルガリータ:テキーラ+リキュール(コアントローまたはトリプルセック)+レモンまたはライムジュース。真珠の意味。
- マタドール:テキーラ+パイナップルジュース+ライムジュース。闘牛士の意味。
- ストロー・ハット:テキーラ+トマトジュース+レモン。麦わら帽子の意味。
- エル・ディアブロ:テキーラ+クリームドカシス+ライムジュース+ジンジャービア。悪魔の意味。
- モッキン・バード:テキーラ+クリームドメント+レモンまたはライムジュース。物まね鳥の意味。
リキュール
高純度アルコール(95%以上)の蒸留酒(スピリッツ)にハーブ、果実、ナッツ、甘味などを加えた混成酒です。ヒポクラテスがワインに薬草を加えて薬酒を作ったのが最初とされています。そのまま飲むこともありますが、カクテルや菓子作り等に使用されます。
梅酒
ホワイトリカー、焼酎、ブランデーなどに青梅を漬け込んで作る酒です。日本の法律では家庭で酒を作ることは禁じられていますが、20度以上のアルコールを用いて、1度以上の追加発酵が無く、販売しないものであれば、家庭でも梅酒を作ることが可能です。ロック、水割り、炭酸割などで飲まれます。
カクテル
上記に挙げたカクテルの他に下記のものなどがあります。
- レッドアイ:ビール+トマトジュース。二日酔いで目の赤くなった者が迎え酒に飲むのが語源という説あり。
- シャンディ・ガフ:ビール+ジンジャーエール。軽やかなビール味。
- カシス・オレンジ:カシスリキュール+オレンジジュース。甘くて飲みやすい。
- カルーア・ミルク:カルーア(コーヒーリキュール)+ミルク。甘くて飲みやすい。
- サイドカー:コニャック+ホワイトキュラソー+レモンジュース。愛飲していた客がサイドカーに乗っていたことから。
- マンハッタン:ウイスキー+スイートベルモット+アンゴスチュラビターズ。カクテルの女王。
- グラスホッパー:グリーンペパーミントリキュール+ホワイトカカオリキュール+生クリーム。バッタやキリギリスの意味。
- カンパリ・ソーダ:カンパリ+ソーダ。カンパリというリキュールをソーダで割ったシンプルなカクテル。
カクテルに関わる用語をちょっとだけ紹介。
- 炭酸水:水に炭酸ガスを加えたもの。
- サイダー:炭酸水に砂糖を加えたもの。
- トニック:炭酸水やサイダーに柑橘類の皮のエキスや糖分を加えたもの。
- ショート:氷無しで短時間で味わうカクテル。
- ロング:氷有りで長時間で味わうカクテル。
- ビルド:グラスの中に材料を入れて混ぜる製法。
- ステア:ミキシンググラスに材料を入れて混ぜ、ストレーナーで濾しながら別のグラスに注ぐ製法。
- シェイク:シェイカーに材料を入れて振り交ぜて、別のグラスに注ぐ製法。
- オン・ザ・ロック:氷のみの飲み方。
- スノースタイル:グラスの縁をレモンやライムで濡らし、塩や砂糖をつけるもの。
- ドロップ:量の単位。約一振り。約5分の1ミリリットル程度。
- ダッシュ:5~6適。約1ミリリットル程度。
- オンス:約30ミリリットル。
- ワンフィンガー:おおむね1オンス(約30ミリリットル)。
- ツーフィンガー:おおむね2オンス(約60ミリリットル)。
- カシス:カシスと呼ばれる(見た目は)ブルベリーに似た果実。
- フィズ:蒸留酒+レモンジュース+砂糖+炭酸水。アメリカ発祥。グラスは普通。
- コリンズ:蒸留酒+レモンジュース+砂糖+炭酸水。イギリス発祥。グラスが大き目。
- バック:蒸留酒+レモンまたはライムジュース+ジンジャーエール。
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初版:2023年7月2日、最終更新:2024年2月25日
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