とほほの広島ラーメン入門

目次

広島ラーメンとは

広島西部を中心とするラーメンです。最近少し全国的知名度の上がった広島東部の尾道ラーメンとは異なります。茶褐色の醤油とんこつ味。豚骨、鶏ガラ、野菜などを白濁するまで煮出していますが、意外にあっさりしています。中細ストレートのやわらか麺。具材はチャーシュー、ネギ、モヤシ、シナチクが基本。ラーメンではなく中華そばと呼ぶ店も多いようです。

広島ラーメンの歴史

広島ラーメンの老舗と言えば「しまい」「すずめ」「陽気」の3軒ですが、親戚関係があります。「段原食堂」を経営されていた沖稔さん、次男が「しまい」を、奥さんの姉妹の娘、つまりは姪っ子姉妹の妹が「すずめ」を、姉が「陽気」を創業します。「しまい」と「乙丸」も姉妹。「うぐいす(流川)」と「うぐいす(新天地)」も姉妹。姉妹店というか、実姉妹が関わる老舗が多い気がします。

上海・段原食堂 (閉店)

戦後の混乱の中、満州からの引揚者や中国人が屋台で提供する中華そばに感動して沖稔(おきみのる)さんが屋台「上海」を開業しました。昭和25年(1950年)に屋台が禁止されたため店舗「段原食堂」を開業しました [1]。次男の誠治さんは「しまい」を、妻シゲノさんの姪の関上タツコさんは「すずめ」、タツコさんの姉の津留田マサエさんは「陽気」を開店させるなど 広島ラーメンのガイア とも言えます。

沖稔・シゲノ (段原食堂)
  +- 沖誠治(稔さんの次男)・ヒデコ (しまい(舟入)→しまい(大町))
  |  + 関上タツコ(シゲノさんの姪)・卓爾 (すずめ)
  |     + 関上道弘(タツコさんの長男)
  |     + 山本誠二(タツコさんの娘婿) (寿々女(舟入))
  |        + 石田満(道弘さん、誠二さんに弟子入り) (めじろ→一ノ口十ノ口)
  + 畠田英子(ヒデコさんの妹)・勇 (しまい(牛田)→乙丸)
  + 津留田秀明・マサエ(シゲノさんの姪) (陽気(屋台))
     + 原宏之(原宏?)・コト (陽気(江波))
        + 小川きくま (陽気(横川))
           + 小川? (きくまさんの長男) (きくま(五日市))

しまい(舟入→大町) (閉店)

Wikipedia では沖稔さんが店主となっています [1] が、沖稔さんの次男沖誠治さんが父(沖稔さん)に習い昭和30年初頭舟入で開業したのが「しまい」です [2]。妻沖ヒデコさんと共に営まれていました。開店時の名前は「姉妹」。姉妹の由来は2説あるようです。広島ラーメンの元祖 ととして続けられましたが2017年4月16日閉店。

「段原食堂」の沖シゲノさんと、「すずめ」の関上タツコさんの母が姉妹だったからという説 [2]
「しまい(大町)」の沖ヒデコさんと、「しまい(牛田店)」の沖栄子さんが姉妹で開いたからという説 [12]

すずめ(寿寿女)

沖シゲノさんの姉の娘である関上(旧姓:沖)タツコさんと夫の関上卓爾さんが「しまい」の沖誠治さんに習って開業したのが「すずめ」です。開業時は「寿寿女」でした。長男の関上道弘さん、娘婿の山本誠二さんも加わり、「めじろ」、「つばめ」など小鳥の名前を冠する 小鳥系広島ラーメンの元祖 となりました。2015年4月に閉店しましたが、舟入で山本さんの「寿々女」が後継店としてオープンされています。

関口さんと書かれている記事もありますが関上さんが正しいようです [4]
ただし [4] では「せきうえ」さん、[7] では「せきがみ」さんになってます。

陽気(初代) (閉店)

「すずめ」の関上タツコさんの姉の津留田マサエさんと夫の津留田秀明さんが、叔父の沖稔さんに習い開業したのが屋台「陽気(元祖)」です。鶴田と書かれている記事もありますが津留田が正しいようです [4]。「陽気(初代)」はすでに閉店していますが、弟子達の「陽気(江波)」、「陽気(横川)」、「陽気(大手町)」など 広島ラーメン陽気の元祖 です。

津留田さんは [2] では鶴田さん、[4] では津留田さんになっています。

陽気(江波)

「陽気(初代)」に学んだ原宏之・原コト夫妻が、「陽気(初代)」から屋台を譲り受け、江波で開業したのが「陽気(江波)」です。広島市街から少し離れたところにあります。原宏さんが亡くなられたあとも、コトばぁちゃんが店をつがれていました [9]。メニューは「中華そば」と「おむすび」の2品のみ。大盛もチャーシュー麺もありません。食べログで 3.70 評価、現代広島ラーメンの人気店 です。

原宏之さんは [4] では 原宏、[12] では原宏之さんになっています。

陽気(横川)

「陽気(江波)」で修行した小川きくまさんが横川で開業されたのが「陽気(横川)」です。メニューは「中華そば」「むすび」に加えて「ビール」が注文できます。少々入れにくいですが駐車場も4台分あります。大手町は江波の系列店で、横川は江波の暖簾分けという記事もみましたが詳細はよくわかりません。

陽気(大手町)

大手町にあるのが「陽気(大手町)」。「陽気(江波)」や「陽気(横川)」は市内中心部からちょっと離れたところにありますが、こちらは路面電車の中電前のすぐ近く。街中で買い物しても少しだけ足をのばせば行けるので行きやすいです。こちらもメニューは「中華そば」、「おにぎり」「ビール」のみ。自販機で食券を購入するのですが、何も書かれていないボタンがずららと並んでいます。

広島ラーメン

乙丸

「しまい」の沖ヒデコさんの妹、畠田英子さんと夫の畠田勇さんが「しまい(牛田店)」を閉じて廿日市で開業されたのが「乙丸」です。醤油を地元の佐伯醤油に変えてスープは少し白濁系。娘の洋美さんと一緒に営まれています。山中にあるので車が無いと辛いですが、駐車場も広く人気店です。

きくま

「陽気(江波)」の小川きくまさんの長男が、父の名前を店名に五日市で開業されたのが「きくま」。陽気系列だったとは知りませんでした。メニューは「中華そば」と「おむすび」の2メニューしかありません。こちらもいつ行っても満員ですね。21時まで空いているので夜遅く行けば大丈夫かな。

めじろ

すずめが閉店すると知って常連の石田満さんが関上道弘さん・山本誠二さんに弟子入りし、二人からお墨付きをもらい、2015年6月に「すずめ」跡地に開店されたのが「めじろ」。「すずめ」の閉店を惜しんでのことですが、まだまだ「すずめ」を名乗ることはできないということから師匠に名前をつけてもらい小鳥系「めじろ」になりました。現在は少し場所を移して「一ノ口 十ノ口」を経営されています。

つばめ

「すずめ」の近くにあるのが、屋台から始まり1982年に店舗を構えた「つばめ」。店主の家にツバメの巣があったことから名づけられたそうです。オレンジがテーマカラー。今も小鳥系ラーメンの老舗として営業されています。お嬢さんが姉妹店「つばさ」(安芸区船越から海田町(矢野)に移転)を開かれています。

うぐいす

満州でラーメンのおいしさを知った姉妹が日本に戻り、姉妹で「うぐいす(流川店)」、「うぐいす(新天地店)」を開かれました。1948年創業なのでかなりの老舗ですね。流川店は閉店してしまいましたが、新天地店は今も営業しています。新天地公園のすぐ横にあり、遅くまで空いているので飲みの〆に寄る人も多そう。

上海総本店

ちょっと系列が違うのですが、広島ラーメンとして書いておきたいのがこの店。女学院近くにあります。味わいありながらもあっさりが多い広島ラーメンですが、この店は近寄っただけで獣の匂いが半端ありません。ワイルド系広島ラーメン。でも食べてみるとそれほどワイルドでもなく、美味しいです。おススメの1杯。

ふじもと

新鋭広島ラーメンとして注目を集めているのが「ふじもと」。「陽気」系とは違い、サンマ、マグロ、ホタテなどのダシを選びます。「陽気」系がやさしい味なのに対して、ニューウェーブとしてガツンとパンチの聴いた男子系ラーメンです。「味喜」「もりかわ」「五色星」など ふじもと系列 と呼ばれる店も増えてきました。

つけ麺

広島のもう一つの名物麺「つけ麺」。冷やした麺を辛いタレにつけて食べます。具材はチャーシューとキャベツなどの野菜がメイン。

新華園

広島つけ麺発祥の店。「新華園」では「つけ麺」とは呼ばず「広島冷麺」と呼びます。店に入っても勝手に席についてはならず、入口脇でベンチ待ちします。撮影禁止、携帯電話禁止、食事中私語禁止、食事後は器をカウンターにあげてテーブルを拭き、料金をカゴに入れます。TVや雑誌の取材はお断りなど、ややルールの多い店ですが、中区河原町(舟入)の本店と市内に何店舗があるようです。

ばくだん屋

広島つけ麺の繁盛店。辛さは1~100辛まで選べます。お願いすると200辛までできるとか。あとから辛みを足してもらうこともできます。新天地の本店をはじめとして、流川店、土橋店、eki店、松川町店、五日市店、八木店、香港店があるようです。今は「広島乃風」というお好み焼きチェーンも展開されていて、こちらも店舗増えてきましたね。

辛部(からぶ)

「からべ」かと思っていたら「からぶ」と読むそうです。初めてつけ麺を食べたのが辛部の広島空港店(閉店)でした。0~30辛まで選べます。後発店ながらこちらも十日市、加古町、五日市、井口、宝町、皆実、広島駅前、海田、相田、東広島、黒瀬など店舗展開されています。もみのりをトッピングするのがおススメだそうです。

汁なし担々麺

広島のもう一つの名物麺が「汁なし担々麺」。「つけ麺」は辛(唐辛子)の辛さですが、「汁なし担々麺」は辛(唐辛子)と麻(山椒)のまじったひき肉ダレと混ぜて食べます。30回以上まぜて食べるのがセオリー。山椒が効くので食べているとホロハレ~になりますが、美味しい。麺を食べ終わった後、残ったひき肉タレに小ご飯を投入して食べるのも美味です。おススメ。

きさく

広島中心街からすこし離れた舟入にある広島の汁なし担々麺発祥の店。中国四川省の担々麺に感動した店主が2001年に創業されました。ちょっと薄暗い店内でみんな全集中で汁なし担々麺を味わっています。美味しい。一番のお気に入りの店です。広島市内ではあまり店舗展開されていませんが、2021年に暖簾分けの五反田店をオープンされたそうです。

五反田店は閉店されたそうです...。情報ありがとうございました(2022.9.13)。

くにまつ

2009年創業。汁なし担々麺の有名店。八丁堀(立町)に本店がありますが、流川、中電前、中町、東広島、アルパーク、LECT、ジ・アウトレット広島、東京神保町、上野、松本市、仙台、沖縄など店舗を増やしているようです。1辛・2辛・3辛の上に KUNIMAX という辛さMAXのメニューがあり、結構辛いですが、でも美味しい。

キング軒

もうひとつの有名店「キング軒」。街中に多いので飲んだ〆に何度か通いましたね。こちらも大手町の本店を筆頭に、本通店、薬研堀、東京、銀座、神保町、神田、梅田、福岡など各地に店舗展開しているようです。お好み焼きの美味しい「悟空」もキング軒系列だったんだ(知らなかった)。こちらもオンライン注文できます。

呉冷麺とおまけ

呉出身としてはずせないのが呉冷麺です。冷麺とは言っても普通の冷麺ではなく呉冷麺にしかない独特な味わい。平打ち麺に旨味、酸味、辛味、甘みの混じった独特なタレ。具材はゆで卵、チャーシュー、海老、キュウリなどがちょっとだけ。具材と麺の絡みを味わうのではなく、独特なタレと麺の絡みを味わうのが呉冷麺。...と言っても伝わらないでしょうね...。とにかく一度食べてみてください。

珍来軒

1955年創業の呉冷麺発祥の店。一度火事で焼失して2008年に現在の場所に移転しました。夏でも冬でもお客さんの大半が呉冷麺を注文します。子供のころは簡単に入れていたのですが、今はいつも行列。呉龍ができるまでは唯一無二の呉冷麺の店でした。後半は酢ガラシで味変するのもおススメ。通販もやってます。

呉龍

1980年に呉冷麺を提供する2軒目の店として創業。繁華街から少しだけ離れますが歩いて行けます。今では元祖の珍来軒と人気を二分するほどの人気店となっています。こちらも並びます。珍来軒もそうですが、麺が無くなると営業終了になるので、閉店まで時間があると思っても早めの訪問をおススメします。

呉麺屋

呉まで足を伸ばすのは無理という方は、広島市内に何店舗か展開する「呉麺屋」があります。「珍来軒」で修行された方達が始められたとか [14]。「珍来軒」や「呉龍」の呉冷麺をすこしおとなしくした感じ。本当は、珍来軒、はしごで呉龍を味わってい欲しいのですが、「呉麺屋」でも、呉冷麺がどんな感じのものなのかを味わうことができます。

モリス

個人的にどうしても紹介したいのが呉のモリス。呉市民のソウルフード。個人的に一番好きなラーメン。1947年創業。イギリスのデザイナー、ウィリアム・モリスが好きで店名にされたそうです。イリコと昆布を中心とした透明なスープに中太ストレート麺。沖縄そばにちょっと似てるかな。